石原研究室の研究
インターネットアクセスが可能な携帯電話や,高機能な携帯情報端末(PDA: Personal Digital Assistant)が急速に普及し,いつでもどこでも情報処理を行う「モバイルコンピューティング」が本格的になってきました.
モバイルコンピューティングでのネットワーク接続には無線通信を使用することがほとんどですが,移動体無線通信は有線の通信に較べてi) 通信速度が遅い,ii) 通信がとぎれやすい,iii) 移動によって品質に大きな変動が起こりうる,といった性質があります.このような環境で有線ネットワークに劣らない快適なコンピューティング環境を提供するには,無線技術だけでなく,ネットワークプロトコルの面からもさまざまな工夫が必要です.一方で,端末の移動性や,携帯性を利用して,モバイルコンピュータを使わなければできないさまざまなアプリケーション,たとえばいつでもどこでも利用できるオフィス環境や,時間と空間の枠を飛び越えた人と人とのコミュニケーションなどの応用があります.
当研究室では,主に無線移動体環境を前提としたネットワークシステムについて,通信プロトコル,ミドルウェア,応用アプリケーションについて研究しています.
主な研究テーマ
- 無線センサーネットワーク省電力化機構
- SHAKE (通信回線共有方式)
- SOLA 〜アドホックネットワークにおける位置依存情報の情報共有機構〜
- 無線マルチホップネットワークにおけるTCP輻輳制御
- 無線LANハンドオーバ発生時のトランスポートプロトコル送信レート決定機構
静岡大学創造科学技術大学院Webサイト内博士課程学生による先端研究紹介にて,当研究室博士課程学生である土田元のインタヴューが掲載されました.
詳しくは[こちら].
SOLA 〜アドホックネットワークにおける位置依存情報の情報共有機構〜
アドホックネットワークとは,無線端末同士で一時的に構築する一時的なネットワークのことで,災害時などネットワークインフラが利用できない場合の通信方法として注目を浴びています.当研究室では,災害時の人命救助や都市インフラの早期復旧作業へのアドホックネットワークの応用として,位置依存情報をアドホックネットワーク上で管理するしくみ(SOLA: Shared Objects with Location information on Ad hoc networks)を検討しています.
なお,この仕組みは災害だけでなく,街角でのパーソナルな情報交換や,道路上での自動車間の運行情報,事故情報,沿線情報などの交換にも応用が可能と考えています.現在,これらの応用に向けた取り組みを進めています.

SOLAの高度交通システムへの応用例
本プロジェクトの一部は,通信・放送機構 地域提案型研究開発「画像処理と無線アドホックネットワークを統合した災害時ライフライン情報通信・復旧支援システムに関する研究開発」のサブテーマに含まれています.
最近の研究内容
センサネットワーク省電力化機構
センサネットワークとはセンシング機能・無線通信機能を有した超小型機器(センサノード)間で形成されるネットワークの事です.
広範囲に配置されたセンサーノードがそれぞれ収集した情報を,センサネットワークを介してシンクと呼ばれるサーバーに転送する事で,収集した情報を一元的に管理する事ができ,大規模な工場や農場における品質管理等での利用に期待されています.
センサネットワークでは,ネットワーク内に存在するセンサノードの数が莫大であり,またセンサノードはその電源容量が限られているという特徴があります.
このようなネットワークを長時間稼動させるためにはネットワークの省電力設計が重要になります.
当研究室では,センサネットワークの省電力化手法の一案として,
位置情報を用いたデータ転送ノード選出方法の検討を行っています.
最近の主な研究内容
SHAKE 〜通信回線共有方式〜
携帯端末が外部のネットワークとの接続に用いる無線通信路は通常,通信速度が遅く,接続が不安定です.そこでSHAKE (SHAring multiple paths procedure for cluster type networK Environments)では,一時的にある場所に集ったユーザの持つ携帯端末どうしで一時的に短距離高速ネットワーク(クラスタネットワーク)を構築し,外部との無線通信には,各端末が持つ無線通信路を同時に使用します.これによって,通信速度および通信の安定性の向上を図ります.SHAKEではこのような複数の端末の協力によって,いつでもどこでも通信環境の違いを感じさせない高品質な通信を実現することを目指しています.

SHAKEの利用イメージ

SHAKEの利用イメージ
SHAKEのような通信形態の実現は,ネットワークプロトコル階層のアプリケーション層から,ネットワーク層までの複数のいずれでも可能ですが,それぞれ一長一短があります.当研究室では,アプリケーション層,トランスポート層,ネットワーク層の個々の層でSHAKEの実現を試みています.
最近の主な研究内容
- NEMO SHAKE
- Never Disconnect SHAKE
無線マルチホップネットワークにおけるTCP輻輳制御
無線端末同士が一時的に構築するネットワークを無線マルチホップネットワークと言います. 無線マルチホップネットワークでは,複数の端末を中継するマルチホップ通信を行うことで,直接電波が届かないような遠い場所にある端末と通信することが可能で,固定インフラを必要としないという特徴があります.
我々の研究グループでは,この無線マルチホップネットワークにおけるTCPの性能を向上させる研究を行っています.

無線マルチホップネットワークの利用イメージ
最近の研究
無線LANハンドオーバ時のトランスポートプロトコル送信レート決定機構
近年,無線通信の高速化や端末の小型化により,PHSや携帯電話回線,無線LANといった無線インターフェースによるインターネットアクセスが行われるようになりました.
無線によるネットワーク接続を行う際,端末が移動に伴い接続基地局を変更する(ハンドオーバ)場合があります.
この時,端末は通信環境の異なるネットワークへ移動する事となるため,
通信環境に合った送信レート(データ送信量)で通信が行えない可能性があります.
こういった場合には,パケットロスや遅延の増大によって,ユーザー品質に悪影響を与える可能性があります.

端末の移動に伴う接続基地局切り替え(ハンドオーバ)
本研究室では,無線LANハンドオーバがトランスポート層に与える影響についての分析,また問題解決のための手法について検討しています.
